DQの部屋

「ここはロマリア城だ。諸君らは何用か?」 「陛下に面会願いたい。」 「では入ってすぐの階段を左に・・・・・・。」 「おい、その人に説明は要らんぞ。」 「あ、隊長。」 「サリナス殿、良くぞこられた。」

8.ロマリア国王

「へー、賑わってるね。」 「んー、俺も久しぶりに来たけど相変わらず活気があるな。」 「そうだな、ここはいつきても賑わっている。」 「ええそうね。」 「あれは・・・・・・。」  オルソスはぶつぶつ言いながら珍しそうにあたりを見回している。 「イヤにきょろきょろしているね。そんなに珍しいかい?」  サリナスはそんな姿がおかしいのだろう、少し笑っているように見える。 「はい、アリアハンとは比べ物にならない活気がありますから。」 「今は一番にぎわっている時間帯だからね。」 「昨日着いた時は夜だったもんな。」  会話しながらも辺りを見回している。  田舎もの丸出しだ。 「そういやお前、他の国に来るのは初めてだっけか?」 「うん、アリアハンから出たことなかったから。」 「ならば、珍しいかもしれないな。」 「アリアハンはのどかだものね。」  アリアハンは世界で最弱の魔物しかでないだけあって国柄もどこかのんび りとしている。活気はないけれど住み良い国だ。漁業が主な産業なので平時 は人が少ない、というのもその理由のひとつになるだろう。 「さてと、まずは城に行くんだろ?」  ヨキは当面の目的をたずねた。 「うん、とりあえず挨拶しておかないといけないし。オーブの情報について、  協力してもらえるかもしれない。それと、これが本当か確かめておかない  と。」  オルソスは額の冠を刺しながらいった。アリアハン国王からもらった額飾 りだ。 「どういうことだい?」  そのあたりの事情を知らないサリナスは、当然の疑問を口にしたが、 「あれは確かオルテガ様の持っていたものと同じものではないかしら。」  答えを返したのはまたもスノウだった。 「となるとあれは確か。」 「各国への協力を仰ぐしるしのはずよ。」  スノウの言葉に納得したようにサリナスはうなずいた。  だが今の二人の会話に気になる人物の名前が挙がった。 「父を知っているのですか?」  オルソスは思わずたずねていた。 「ん、ああ、まだ子供のころに会っただけだけどね。」 「そのときにその額飾りの事を聞いたのよ。」 「そう、ですか。」  オルテガは世界中を旅していたからそういうこともあるだろう。  子供が大好きだった父なら、尋ねられたら答えるだろうと思った。 「とりあえず城に向かうんだろう?案内しよう」  そういってサリナスは先頭に出た。 「あ、はい、お願いします。」  サリナスは迷うことなく進んでいる。  その様子は何度も言ったことがあるものの足取りだった。 「そうすっとお二人はずいぶんと昔から知り合いなんですねえ。」  ヨキは先ほどの会話から推測したことをつぶやいていた。 「ん、何でそう思うんだい?」 「今の話の流れだとオルテガさんにあったとき二人は一緒にいたような感じ  でしたから。」 「ええ、子供のころからのつきあいではあるわね。」 「昔といううほど年はとっていないけどね。」  苦笑しながら言う二人。だが、二人の言葉には暖かさがあった。 「だが、それは君たちも同じじゃないのかな?」  サリナスは逆にたずねた。 「んーどうなんだろうなぁ。」 「別に考えるところでもないよヨキ。そういうことになりますね。」 「そうでしょう。」 「ああ、話は変わるけど、協力については額飾りぬきにしても問題ないと思  う。あの方ならむしろ嬉々として協力してくださるだろう。」 「知り合いなんすか?」 「ああ、何度か面会したこともある。気さくな方だよ。」  旅の経験豊富な二人だ。長いこと旅をしているみたいだからどこに知り合 いがいてもおかしくはない。だがまさか国王と知り合いだったとは。 「気さく、ふふっ。物も言い様ね。」  突然スノウが笑い始めた。何かおかしかったらしい。 「どうしたんすか。」 「いえ、なんでもないわ。」 「まあ、これ以上はあってのお楽しみとしようじゃないか。」 「そうね。」  意味深なことを言う二人。 「なんか気になりますね。」 「それよりも急ぎましょう。どのくらいで着きますか?」 「多分あと10分ぐらいじゃないかな?」              *  * 「ここはロマリア城だ。諸君らは何用か?」  城に着いた一行を迎えたのは当然ながら門番だった。 「陛下に面会願いたい。」  サリナスが用件を手短に伝えた。  それで納得したのか、兵士は説明を始めた。謁見の間までの道を教えてく れるつもりのようだ。 「では入ってすぐの階段を左に・・・・・・。」 「おい、その人に説明は要らんぞ。」 「あ、隊長。」  だがその説明は途中で遮られた。隊長と呼ばれているところを見ると、ど うやらここの責任者のようだ。 「サリナス殿、良くぞこられた。」 「バニング殿、ご無沙汰しております。」  バニングと呼ばれた人物とサリナスは親しげに挨拶を交わす。  どうやら以前来た時の知り合いのようだ。 「さあ、陛下がお待ちです。今回はどのような話をされるのか、楽しみでし  ょうがないようです。」 「いや、今回の私たちは付き添いなんだ。勇者のね。」 「は、はあ?」  どうやらてっきりサリナスの用事で城に寄ったと思っていたようだ。 「ま、まあとにかくお入りください。」   話している最中に謁見の間に着いたようだ。 「入るがよい。」  扉の向こうからよく通る声が響いた。 「さあ、オルソス、君が先頭だろ?」  オルソスは無言で頷き扉を開けた。 「おお、来たか、サリナス。スノウ殿。して、今回はどのような話を聞かせ  てくれるのじゃ?」  王はよほど楽しみにしていたのだろう、満面の笑みを浮かべて一行を迎え 入れると、早速用件を尋ねた。  だが、サリナスの答えは王の予想とは違ったものだった。 「陛下、今日は私のようで訪れたわけではございません。」 「どういうことじゃ?」  怪訝そうにする王の様子にオルソスは一歩前に出て、騎士の礼をとった。 「陛下、お初にお目にかかります。」 「そなたは?」 「私はアリアハンのオルテガ・アレフ・クーガーヶ一子、オルソス・アレフ  ・クーガーと申すものです。」 「おおっ!そなたはあの勇者オルテガの息子と申すか。」 「はい、真でございます。」  にわかに謁見の間がざわめき始める。当然のことだろう。すでに没したと は言え、未だに勇者オルテガは尊敬と憧れの対称だ。その忘れ形見がいきな り城を訪れたのだからざわめきは当然といえた。 「して、オルソスといったか、何用でわが下を訪れたのじゃ?」 「はは、実は陛下にお尋ねしたいことがございます。」 「ふむ、何じゃ。」 「不死鳥ラーミアについての伝承で、オーブの存在についてなにかご存知で  はないでしょうか?」 「オーブ、とな。」 「はい。」  王は少し思案した後、 「いや、聞いたことが無い。おい、誰か知っておるものは居るか?」  しかし王の言葉に頷くものはいなかった。それどころか皆困ったような顔 をしていた。 「すまんのぉ、どうやら力にはなれそうに無いようじゃ。」 「いえ。」 「じゃが、城の書庫の方に何か手がかりがあるやも知れぬ。ライブよ、今日  から早速書庫にてラーミアについての記述を探せ。」 「はっ。」 「どのくらいかかるかの。」 「おそらくは一月以上はかかるかと。」  城にある本の数は膨大だ。そこからラーミアについての記述を探してまと めるのだから当然といえた。 「ふむ、そうか。政務の方は心配するな。では早速取り掛かれ。」 「ははっ。」  ライブと呼ばれた人物は数人の(おそらくは部下であろう)人を連れ謁見の 間を去った。  ライブ達が去った後、王はオルソスに向き直った。 「オルソスよ。わしからもひとつ頼みがあるのじゃが、よいかの。」 「なんでしょうか。」 「実はカンタダという盗賊に国宝である金の冠を盗まれたのじゃ。居場所は  分かっておるのじゃが、いかんせん、この状況で大規模な軍は動かせん。」  確かに現在どこの国も自分の国を守るだけで精一杯だ。とても盗賊退治に 兵力を咲く余裕はないのだ。 「途方にくれておったのじゃが、これも精霊ルビスの導きかの、おぬしが現  れた。どうじゃ、頼まれてはくれんかの。」  そのような事情をかんがみると、オルソスにはとても断れなかった。 「かまいませんが、場所はどこなのです?」 「ここから北にあるカザーブという村から、西に行ったところにある塔が、  彼奴の根城といわれておる。おそらく今回もそこにおるのじゃろう。地図、   食料、その他にいるものがあればこちらで用意する。何なりと言うがよい。  詳細はライブから聞くとよい。」 「あのぉ。」 「なんじゃ、バニング。」 「ライブ大臣ならもう書庫に向かわれましたが。」  どうやら先ほど言ったことを忘れていたようだ。 「おおっ、そうじゃったな。ではおぬしが彼らに説明してあげなさい。必要  なものがあればワシのポケットから出すように。戻ってくるころにはこち  らの調べもついておろう。」 「はは。では行きましょう。オルソス殿、こちらです。」 「はい。」  バニングはオルソスたちを先導するように謁見の間を去っていく。 「あ、サリナスはもう少し残っておくように。少し旅の話を聞きたい。ああ、  他の者はもう下がってよいぞ。」 「はい、分かりました。」              *  *  王に言われその場には、サリナスと王だけが残った。兵士たちも全員下が っているところを見ると、サリナスはかなり大きな信頼を得ているようだ。 「さて、これで良かったのかの。」  その場にサリナスしかいないことを確認した後、王はサリナスに尋ねた。 「ええ、ありがとうございます。彼の実力を、これで少しは知ることが出来  るでしょう。」 「おぬしから見て彼はどうじゃな?」 「戦闘の面で言えば強いですよ。いまだ全力を見ていないのでなんともいえ  ませんが、それでも、戦いにおいて彼と並ぶものはそう多くはいないでし  ょうね。」  あのオルテガの息子だ。戦闘力が高くても不思議ではない。何よりサリナ スがこれだけ評価しているのだから確かなのだろう。 「戦闘の面では?」  だが、そのことをずいぶんと強調した物言いに王は疑問を感じた。 「ええ、何があったかは知りませんが精神面ではかなり脆い所があります。  普段は気になるようなものじゃありませんが。」 「そうか。そんな風には見えんがのう。」  一国の王を前にしてのあの毅然とした態度が目に浮かぶ。とても脆そうに は見えない。しかし、サリナスの人を見る目は確かだ。そこは疑う余地が無 い。 「しかしおぬしは本当に父によく似ておるのう。」 「は?」  突然父の話を振ってきた王にサリナスは反応しきれず変な声を出した。 「なに、あの男も同じようなことをしたことがあるのじゃよ。オルテガ殿も  寡黙であったしのう。黙っていても子は親に似るようじゃな。」 「はぁ、そうですか。」 「ほほ、そうじゃよ。さあおぬしも行くがよい。」 「はい、では失礼します。」  サリナスが去った後、王は一人呟いた。 「やはりあの報告は本当じゃったか。サリナスにしろ、あの少年にしろ、運  命とは実に残酷なものじゃな。願わくば、あの者達にルビスの導きがあら  んことを。」  無力な王に出来るのはせめて祈ることだけだった。

2008/06/26       なかなかうまく動いてくれませんね。彼らは。そして相変わら      ずオルソスはセリフが少ない。サリナスとどっちが主人公だよっ      ていう感じですね。       ちなみに新キャラの名前はかなり適当です。
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