『オルソス。』  優しく包まれるような女性の声が頭へ響いてくる。 『オルソス。』  どこか、懐かしい声だ。 『私の声が聞こえますか…。』 (あなたは、誰?) 『私は……』  しかし、夢は、ここで途切れ、僕は目が覚めた。

アリアハン

1.オルソス

「う〜ん。」  僕はベットを降り、窓の外を見た。  うん、いい天気だ。  軽く背伸びを下あと1階へと降りた。 「おはよう母さん、じいちゃん。」  僕は既に席についている二人へと声をかけた。 「おはよう、オル。早う席へ座れ。」  じいちゃんは待ちくたびれていたのか、少し機嫌悪そうに言った。 「全く、今日はお主の……。」  始まった。じいちゃん得意の説教が。  ナレス・アレフ・クーガー。この名を知らぬ者はいないだろう。  世界有数の魔法使いにして、前アリアハン騎士団長であり、三勇者の筆頭、 オルテガの父。  若い頃は何十人だろうが素手で倒せるほど強かったらしい。  僕の剣術の師である、ガルダ現アリアハン騎士団長の話によると、魔法を 使えば一人で騎士団全員を相手に出来るほどだったらしい。(ちなみに騎士団 員は100〜150人)  にわかには信じがたい話だが、じいちゃんから直接魔法と体術を習ってい る僕には納得できてしまうのだった。  僕を相手に組み手をするときはいつも片手で、それでもじいちゃんから一 本たりとも取れた事は無かった。  僕の知る限り、まともに一本取れたのはあの人だけだった。  ただあの人だけ。 「まあまあ、お義父さん、その辺にしてあげて下さい。」  いつものようにじいちゃんを止めたのは母さんだ。  ルビア・クーガー。元僧侶でその法力は依然高く神官長クラスなら軽く凌 駕するほど。  神官長といえば上級法術を使えることが最低条件。このことからも、母さ んの力のすごさが伺えるというもの。  旅をしていた頃同じく旅をしていた父と出会い、結婚したのだそうだ。  こんなふうにしている様子からは全く想像もつかないけれど。  「さあ食べましょう。」  かあさんはそう言って、朝食を並べた。おいしそうだ。 「いただきまーす。」  僕は待ちきれなくなり朝食を食べ始めた。              *  * 「ご馳走様。」  僕は朝食を食べ終わったあと着替えるため、二階へと上がった。 「ふう、この部屋とも、お別れか。」  僕は着替えながらそうつぶやいていた。  いよいよ今日、僕は旅立つ。 「オル〜、早くしないと、時間がないわよ〜。」  階下から母さんの声がした。 「あと少し〜。」  母さんに返事をしたあと、昨日彼女から貰ったマントと首飾りをつけ、下 へ降りた。  母さんは既に外で待っていた。 「さあ行きましょう。王様も、首を長くしてお待ちになられているのだから。」  このアリアハンでは、王の許可なしに国外に出る事が出来ない。そのため、 今から王様に許可を戴きに行くのだ。  城への道中、母さんは僕のカッコウを見て、 「あら、そのマント、どうしたの?昨日旅支度していていたときには見なか ったけれど?」 と聞いてきた。 「昨日なんだか眠れなくて、母さんたちが寝たあとあの人の墓へ言ったんだ。  その時に……。」 「ああ、あの子から貰ったのね。団長の娘さんでしょ。」  何で分かったんだろう、そう思った僕の疑問に答えるように、 「だって、あの子の所に行くといったらあなたとあの娘しかいないじゃない。」  母さんは当たり前というように言った。 「それとも他にいるのかしら?」  そうだ。あの人のところへは僕のほかには彼女しか行かないのだった。  あの人の妹の彼女しか。 「それもそうだね。あ、城が見えてきた。」  アリアハン城。世界最古の歴史を持つ国にふさわしく、その城は、見るも のに荘厳さを感じさせ、畏敬の念を想起させる。  その佇まいは5年前と全く変わっていなかった。  城門まで付いた所で母さんは、 「さあ、オル。ここからはあなた一人で行きなさい。」  それは以前から母さんと話していたことだった。 「うん、行って来るよ。」  母さんに告げ、僕は城への橋へと足を掛けた。  途中、何度か振り向こうかと思ったけれど、止めた。  振り向いたら、旅立てなくなる。  そんな気がした。  そして僕は城へと入っていった。

 2006年2月7日  2008/10/19一部改定
          アリアハン 1.オルソス あとがき       う〜ん、これでいいんですかねえ。今回もオルソスの一人称で      進んでいます。       他に書き方はないのかと思わないで下さい。お願いします。       また出ましたね『あの人』。『あの人』についてはおいおい出      てくるかと思います。心配しないで下さい。       それにしても名前が出ない人が多い、『あの人』とか『彼女』      とか。       本編の方ですが、お母さんマントの事しか言っていませんが、      チャンと首飾りにも気づいていますよ。ただ彼女の気持ちも知っ      ているからいわなかっただけで。       オルソスじゃなくてね。       ナレフさんもあまり喋っていません。本来は良く喋る人なので      すが、話にあまり絡んでないからなんです。もうちょっと喋らせ      たかったなあ、反省。       最後に、駄文を読んでいただきありがとうございます。
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